2019年09月02日
2019.4.14 『第98回DKCinいわき市』
【日時】2019年4月14日(日)13:00~16:00
【場所】福島・いわき市平体育館
【参加人数】240名
高田道場が主催する第98回目のダイヤモンドキッズカレッジ(DKC)は、福島県で2回目、いわき市では初の開催となりました。
東日本大震災の被災地である福島県浜通りに位置するいわき市での開催ということで、DKCチームは開催前日の4月13日(土)に現地入りして、福島県こども・青少年政策課のスタッフの皆様のご案内で被災地を視察しました。
いわき駅からバスに乗り込んだ高田延彦先生、向井亜紀先生をはじめとするDKCスタッフたち。最初に訪れたのは、浪江町の請戸小学校です。津波が校舎を飲み込んで大きな被害を受けましたが、全員避難して在校生には一人も犠牲者が出ていません。津波が到達した時刻で止まったままの時計が校舎には掲げられていました。そのときの模様を聞きながら「よく逃げたね」と感慨深げにつぶやいた高田先生と向井先生。津波の破壊力の凄まじさを目の当たりにしながら、思いを馳せていました。
福島第一原発のそばの線量の高い地域を通過しながら向かったのは、桜の名所である「夜ノ森さくら通り」です。震災以前から桜の名所として名高い夜ノ森さくら通りが、福島第一原発から飛散した放射性物質の影響で全長2.2キロメートルのうち1.9キロメートルが帰還困難区域として立ち入り禁止になっています。美しい桜並木をぶった切るように立てられたフェンスを目の前に、言葉を失うDKC一同でした。それでも除染が完了すれば、数年後には立ち入り禁止は解除される見通しとのこと。
最後は福島第一原発事故収束の前線基地となったJヴィレッジを訪問しました。震災前は国内最大級のスポーツ施設としてサッカー日本代表やラグビー日本代表の合宿施設として稼働していましたが、震災後は政府と東京電力が全面使用、ここから福島第一原発へと作業員を送り出し、広大なグラウンドも駐車場として活用されていました。
2020年の東京オリンピックを目指し、Jヴィレッジを2019年4月から復興させるプロジェクトが立ち上がり、全面的にリニューアル。476名が宿泊できる施設と、全天候型練習場、天然芝7面、人工芝2面、雨天練習場、スタジアム、プール、体育館を備えた施設として生まれ変わりました。スポーツイベントだけではなく、音楽イベント、国際会議、地域での利用など、さまざまな用途で使用できる施設として生まれ変わりました。すぐ近くには、イベント開催時のみ停車する臨時駅として新たに「Jヴィレッジ駅」という常磐線の駅も新設され、復興の盛り上がりに一役買っています。
高田先生と向井先生はピッチが一望できるJヴィレッジの4階バルコニーから全体を視察し、「すごいねぇ!」と驚きの声をあげました。「いつか全天候型練習場でDKCを開催しようか? 大きすぎるか(笑)」と笑顔を見せました。全天候型練習場では実際にサッカーボールを蹴ったり、セグウェイを小型化したような立ち乗り自動二輪車に乗ったりして、ふかふかの人工芝の感触を確認しました。
駆け足で被災地を視察してきましたが、時間が止まったままのような場所から復興の象徴的な現場まで、福島の“いま”をリアルに体感したことで、翌日のDKCで、この街で育っていく子どもたちに自分たちは何ができるのかを考える、とてもいい機会をいただきました。ご案内いただいた現地の皆様にはあらためて感謝を申し上げます。
翌日はいわき市の平体育館でDKCが開催されました。
イベント開始に先駆けて、全国各地のDKC会場や街頭で子どもたちが集めてきた募金をお渡しするセレモニーが開催されました。福島県こども未来局局長・佐々木秀三様に、高田先生より85万1,700円の目録が手渡されました。こちらは全額が「東日本大震災ふくしまこども寄付金」として活用されます。
高田先生と熱く握手をかわした佐々木局長は、「高田道場の皆さん、ふくしまこども寄付金ありがとうございます。ふくしまこども寄付金は東日本大震災でお父さん、お母さんを亡くされた子どもたちが学校を卒業するための資金として活用されます。その他に、子どもたちがスポーツや勉強で、より良く、より充実した生活を送れるようにいろんな事業に使われます。震災以降、子どもたちが元気で活動する姿は大人の励みでした。皆さんも元気にスポーツと元気に励んで立派な大人になってください」と挨拶しました。
ちなみに、今回はキッズの参加者全員に、高田道場Tシャツがプレゼントされました。全国各地で困っているお友達がいるから助けてあげようとチャリティ販売していたキッズ用Tシャツです。DKCが開催された各地のキッズと福島県の子どもたちの間に、こういった部分でも絆ができればとスタッフ一同、願っております。
マットの準備やキッズへの指導では、地元のふたば未来学園高等学校、福島県立喜多方桐桜高等学校、福島県立田島高等学校のレスリング部の皆さんが協力してくださいました。キッズの参加者は未経験者がほとんどという状況で、優しく丁寧に子どもたちに寄り添った指導をしてくださり、おかげさまでキッズたちにとっては忘れられないイベントになったと思います。
この日はシドニーオリンピック・フリースタイル63kg級の日本代表選手で、元MMAファイターの宮田和幸先生も駆けつけてくださいました。現在はBRAVEという自身のジムでキッズレスリングの指導者としても活躍しています。
「みんなが生まれる前の2000年にオリンピックに出たんですけど、当時はクリナップという会社に在籍してレスリングをしていました。そのときに4年くらいいわき市に住んでいたことがあって、今日は懐かしい気持ちです(笑)。今日はよろしくお願いします!」
笑顔で挨拶した宮田先生でした。BRAVEジム所属の現役MMAファイターで、キッズレスリングの指導者でもある鈴木隼人選手も駆けつけてくれました。
「今日は元気に楽しく、精一杯全力で頑張りましょう! よろしくお願いします!」
その言葉通り、キッズにも全力で指導していただきました。いつにも増してゲストが多い今回のDKCですが、高田道場のスタッフも元気いっぱいでスタートしました。
「こんにちは!」
という高田先生の挨拶に大きな声で
「こんにちは!」
という返事がかえってきました。「100点満点です」と高田先生もニッコリ。さらに、キッズたちと向き合って「体を動かすことも、お話を聞くことも、どちらもダイヤモンドキッズカレッジです」と説明します。
向井先生は「うまくできなくてもいい。真面目にやらなきゃダメとはいいません。でも、みんなには本気を出してもらいます」と説明します。「目標がないとつまらないと思いますので、最後には先生と試合をしてもらいます」とDKCの最終目標である大人の先生との試合することが告げられると、驚きの声がキッズからあがったのは言うまでもありません。さあ、どうなるでしょうか?
向井先生のおそうじ体操からスタートです。向井先生のおそうじの動きに合わせて、キッズたちも見様見真似ですが音楽に乗りながら全身をくまなく動かしていきます。
体がほぐれてきたら、次はダッシュ。マットを往復します。遠慮がちに走っているキッズたちに、高田先生は「いわきの子って、もうちょっとパワーがあると思ったんだけどな。もっと全力を出せる?」と問いかけます。向井先生は「恥ずかしがってるのかな?」と首を捻ります。そんな一言が、キッズたちのリミッターを解除させるには十分すぎる効果を発揮して、さらにスピードアップ! キッズたちの可能性をどんどん引き出していく見事なチームプレイでした。
次は雑巾がけです。小学校でみんなやっていることですが、トレーニングの効果も注目されており、足腰と体幹が強くなる効果があるそうです。「手を広げて雑巾をおさえ、濡れたマットをすべらないようにしっかり足でつかむことがポイントです」そんな高田先生のアドバイスを聞いて真剣に取り組むキッズたち。
手をついてマットの上を駆けるクマ歩きは、高田道場の中野先生が見事なお手本を披露します。うまくできなかった子も、何度か繰り返しているうちにぐんぐんとスピードが上がっていきます。「前に転ぶのはいいことなので気にしないでね!」向井先生からもアドバイスが飛び出します。
ここで一旦水分補給の休憩を取ります。すでにここまでの運動で、学校の体育の授業よりも運動量が多くなっているので、ゆっくりと水分を摂るようにスポーツドリンクを1人1本プレゼントしました。
休憩明けは2人1組での運動です。
バンザイ状態の手のひらと足のつま先をスクワットしながら交互にさわる運動、サイドステップで相手の周りをまわる運動、そして交互にジャンプする運動を次々と行います。運動の強度がぐっと上がり、しかも頭を使いながらの運動になるので余計に疲れるようで、終わった頃にはキッズたちは倒れ込むほど疲労困憊です。
それでも、運動のあとにはお互いの健闘を称え合うように「ヤッター! イェーイ!」とハイタッチ。先程のダッシュのときのように、羞恥心を取り除くとキッズたちは思わぬパワーを発揮するのです。お手本を見せた高田先生は「恥ずかしい気持ちをどうやって自分から捨てられるか? だよ」と言って、実際に巨漢のスタッフとお手本を披露。「ヤッター! イェーイ!」の後に抱き合ってくるくると回転する見事なパフォーマンスで、会場全体から拍手喝采を浴びていました。
「いまからDKCで子どもたちに人気のある運動をやります」と高田先生が予告してから始めたのは、タオルを使った綱引きです。
厚手のタオルの端と端を持って引っ張り合う単純な綱引きですが、キッズたちはいろんな先生と勝負したくて行列を作りながら挑戦してきます。休みなくキッズたちの相手をする大人たちは早くもバテ気味ですが、キッズたちの挑戦を受けた高田先生は「いいぞ!」「強く引け! 思いっきりだ!」と檄を飛ばしながら気持ちよく汗を流しました。
再び水分補給の休憩を挟んだ後は、いよいよレスリングの練習です。他のどんなスポーツでも、まずは正しい構えから始まるということを説明してから、構えを教わります。足の幅が広すぎて、狭すぎても、倒れやすくて不安定になってしまいます。肩幅のサイズに足幅を広げて低く構えることで、あらゆる衝撃に耐えられる安定したバランスになることを学びます。向井先生や高田先生が押しても、お手本を披露した中野先生と松本先生はビクともしません。
「女の先生も正しい構えをやればビクともしません」
高田先生に呼び出されて登場した石郷先生は何度か押されると、突如としてバック転でクルクルと回転し始めます。思わず驚嘆の声が上がる場内。器械体操出身の石郷先生は、じつは高田道場で体操を教えている先生なので、こうした動きは得意中の得意なのです。
キッズたちは(バック転はできませんが)その姿を見ながら自分たちでも正しい構えを身につけます。
「ここからの練習は、意地悪な気持ちではできない練習です」
向井先生はタックルの練習前に真剣な表情でキッズたちの目をまっすぐに見つめながら説明します。日大アメフト部のタックル問題があったことで、タックルという言葉の負のイメージが先行しがちですが、レスリングはタックルが非常に重要な競技です。だからこそ、その危険性をキッズたちにもしっかりと認識してもらい、正しい方法で学んでほしいと願っています。
タックルの入り方をゆっくりと念入りに教わって、実施に大人を相手に打ち込みをします。受け身を教わっていないキッズ同士でのタックル練習は絶対に行ないません。キッズは大人の先生の腰めがけて突っ込んでいきます。手は相手の膝の裏にくるように回して、相手に体ごとぶつかっていきます。大きな音を立てて、次から次へと大人たちが倒れていきます。
キッズたちの吸収するスピードに目を細めた高田先生は「いま、みんなは凄いスピードで伸びているね。このままの勢いで試合をやっちゃおう!」とすぐに試合をスタートさせます。試合は相手の両方を1秒間マットにつけたらフォール勝ちという、レスリングのルールが採用されます。
試合という言葉に目を輝かせ、早くやりたいと盛り上がるキッズたち。高田先生や宮田先生もキッズたちの挑戦に胸を貸します。かわしたり、フェイントを入れたりする大人に、勢いよく突っ込んでいくキッズたち。思いっきり体重をかけて、懸命にフォールを奪いに行きます。
あっという間に時間が過ぎてしまい試合の時間は終了。「みんな、先生に勝てたかな?」という質問に全員が元気よく手を挙げていました。
「練習が始まる前に、今日は自信を増やす日にしてくださいという話をしました。自分は頑張ると凄いパワーが出せると分かった人は手を挙げてください」
向井先生の言葉に全員が手を挙げてくれました。
「素晴らしいです。みんなが頑張ってた姿は私たちが見ていました。自分を大好きな気持ち、自信を大事にしてくださいね」
思わず笑顔がこぼれる向井先生です。
「今日、みんなにレスリングを教えてくれた大人たちは、今日来てよかったな、みんなと会えてよかったな、福島に来てよかったなという思いです。みんなは今日来てよかったなと思ったか、来なければよかったなと思ったか、あえて聞きませんけど、それをお家の人たちと話してみてください」
高田先生もキッズたちの目を見ながら語りかけます。そして、DKCというイベントの本質をキッズたちにわかりやすく伝えていきます。
「運動って楽しいよ、体を動かすのは楽しいよ、その後のご飯は美味しいよ、宿題はもちろんやらないといけないけど、よく眠れるよということを伝えたくて、ダイヤモンドキッズカレッジは13年も続けています。君たちに必要なのは、毎日は難しくてもできれば週1回は友達と体を動かして、たくさんご飯を食べて、たくさん睡眠をとってほしい。そんなメッセージを伝えたいんです」
キッズたちに「この場所でどうしても言っておきたいという感想があれば手を挙げて!」と呼びかけると、次々と元気に手が挙がりました。
「今日はみんな元気よく遊べて良かったです」
「みんなでプロレスをやれて良かったです」
「最初の運動は大変だったけど、あとは楽しかった。今日は来てよかったです」
「初めてのことができて楽しかった」
「私が楽しかった。来て良かったと思いました」
「初めてプロレスをやって、最初はうまくできなかったけど楽しくできたので良かったです」
「最初から最後まで全部楽しかったです」
なぜかレスリングが「プロレス」に変換されたキッズもいましたが、楽しい時間を過ごしてくれたようです。ちなみに高田先生からは「今日やったのは、プロレスではなくてレスリングです!」と訂正が入ったこともお伝えしておきたいと思います。
指導をした高校生の先生からも感想を聞きました。
「人に指導をすることを初めてやりました。とてもいい経験ができました。これからもキッズたちはレスリングを経験してもらいたいと思いました」
「みんな元気で、元気をもらえました」
「レスリングに対する姿勢が一生懸命で、自分もみんなのような姿勢でレスリングに取り組みたいと思いました」
指導する側、される側、それぞれに得るものがあったようです。最後は全員で礼をして終わりました。
【場所】福島・いわき市平体育館
【参加人数】240名
高田道場が主催する第98回目のダイヤモンドキッズカレッジ(DKC)は、福島県で2回目、いわき市では初の開催となりました。
東日本大震災の被災地である福島県浜通りに位置するいわき市での開催ということで、DKCチームは開催前日の4月13日(土)に現地入りして、福島県こども・青少年政策課のスタッフの皆様のご案内で被災地を視察しました。
いわき駅からバスに乗り込んだ高田延彦先生、向井亜紀先生をはじめとするDKCスタッフたち。最初に訪れたのは、浪江町の請戸小学校です。津波が校舎を飲み込んで大きな被害を受けましたが、全員避難して在校生には一人も犠牲者が出ていません。津波が到達した時刻で止まったままの時計が校舎には掲げられていました。そのときの模様を聞きながら「よく逃げたね」と感慨深げにつぶやいた高田先生と向井先生。津波の破壊力の凄まじさを目の当たりにしながら、思いを馳せていました。
福島第一原発のそばの線量の高い地域を通過しながら向かったのは、桜の名所である「夜ノ森さくら通り」です。震災以前から桜の名所として名高い夜ノ森さくら通りが、福島第一原発から飛散した放射性物質の影響で全長2.2キロメートルのうち1.9キロメートルが帰還困難区域として立ち入り禁止になっています。美しい桜並木をぶった切るように立てられたフェンスを目の前に、言葉を失うDKC一同でした。それでも除染が完了すれば、数年後には立ち入り禁止は解除される見通しとのこと。
最後は福島第一原発事故収束の前線基地となったJヴィレッジを訪問しました。震災前は国内最大級のスポーツ施設としてサッカー日本代表やラグビー日本代表の合宿施設として稼働していましたが、震災後は政府と東京電力が全面使用、ここから福島第一原発へと作業員を送り出し、広大なグラウンドも駐車場として活用されていました。
2020年の東京オリンピックを目指し、Jヴィレッジを2019年4月から復興させるプロジェクトが立ち上がり、全面的にリニューアル。476名が宿泊できる施設と、全天候型練習場、天然芝7面、人工芝2面、雨天練習場、スタジアム、プール、体育館を備えた施設として生まれ変わりました。スポーツイベントだけではなく、音楽イベント、国際会議、地域での利用など、さまざまな用途で使用できる施設として生まれ変わりました。すぐ近くには、イベント開催時のみ停車する臨時駅として新たに「Jヴィレッジ駅」という常磐線の駅も新設され、復興の盛り上がりに一役買っています。
高田先生と向井先生はピッチが一望できるJヴィレッジの4階バルコニーから全体を視察し、「すごいねぇ!」と驚きの声をあげました。「いつか全天候型練習場でDKCを開催しようか? 大きすぎるか(笑)」と笑顔を見せました。全天候型練習場では実際にサッカーボールを蹴ったり、セグウェイを小型化したような立ち乗り自動二輪車に乗ったりして、ふかふかの人工芝の感触を確認しました。
駆け足で被災地を視察してきましたが、時間が止まったままのような場所から復興の象徴的な現場まで、福島の“いま”をリアルに体感したことで、翌日のDKCで、この街で育っていく子どもたちに自分たちは何ができるのかを考える、とてもいい機会をいただきました。ご案内いただいた現地の皆様にはあらためて感謝を申し上げます。
翌日はいわき市の平体育館でDKCが開催されました。
イベント開始に先駆けて、全国各地のDKC会場や街頭で子どもたちが集めてきた募金をお渡しするセレモニーが開催されました。福島県こども未来局局長・佐々木秀三様に、高田先生より85万1,700円の目録が手渡されました。こちらは全額が「東日本大震災ふくしまこども寄付金」として活用されます。
高田先生と熱く握手をかわした佐々木局長は、「高田道場の皆さん、ふくしまこども寄付金ありがとうございます。ふくしまこども寄付金は東日本大震災でお父さん、お母さんを亡くされた子どもたちが学校を卒業するための資金として活用されます。その他に、子どもたちがスポーツや勉強で、より良く、より充実した生活を送れるようにいろんな事業に使われます。震災以降、子どもたちが元気で活動する姿は大人の励みでした。皆さんも元気にスポーツと元気に励んで立派な大人になってください」と挨拶しました。
ちなみに、今回はキッズの参加者全員に、高田道場Tシャツがプレゼントされました。全国各地で困っているお友達がいるから助けてあげようとチャリティ販売していたキッズ用Tシャツです。DKCが開催された各地のキッズと福島県の子どもたちの間に、こういった部分でも絆ができればとスタッフ一同、願っております。
マットの準備やキッズへの指導では、地元のふたば未来学園高等学校、福島県立喜多方桐桜高等学校、福島県立田島高等学校のレスリング部の皆さんが協力してくださいました。キッズの参加者は未経験者がほとんどという状況で、優しく丁寧に子どもたちに寄り添った指導をしてくださり、おかげさまでキッズたちにとっては忘れられないイベントになったと思います。
この日はシドニーオリンピック・フリースタイル63kg級の日本代表選手で、元MMAファイターの宮田和幸先生も駆けつけてくださいました。現在はBRAVEという自身のジムでキッズレスリングの指導者としても活躍しています。
「みんなが生まれる前の2000年にオリンピックに出たんですけど、当時はクリナップという会社に在籍してレスリングをしていました。そのときに4年くらいいわき市に住んでいたことがあって、今日は懐かしい気持ちです(笑)。今日はよろしくお願いします!」
笑顔で挨拶した宮田先生でした。BRAVEジム所属の現役MMAファイターで、キッズレスリングの指導者でもある鈴木隼人選手も駆けつけてくれました。
「今日は元気に楽しく、精一杯全力で頑張りましょう! よろしくお願いします!」
その言葉通り、キッズにも全力で指導していただきました。いつにも増してゲストが多い今回のDKCですが、高田道場のスタッフも元気いっぱいでスタートしました。
「こんにちは!」
という高田先生の挨拶に大きな声で
「こんにちは!」
という返事がかえってきました。「100点満点です」と高田先生もニッコリ。さらに、キッズたちと向き合って「体を動かすことも、お話を聞くことも、どちらもダイヤモンドキッズカレッジです」と説明します。
向井先生は「うまくできなくてもいい。真面目にやらなきゃダメとはいいません。でも、みんなには本気を出してもらいます」と説明します。「目標がないとつまらないと思いますので、最後には先生と試合をしてもらいます」とDKCの最終目標である大人の先生との試合することが告げられると、驚きの声がキッズからあがったのは言うまでもありません。さあ、どうなるでしょうか?
向井先生のおそうじ体操からスタートです。向井先生のおそうじの動きに合わせて、キッズたちも見様見真似ですが音楽に乗りながら全身をくまなく動かしていきます。
体がほぐれてきたら、次はダッシュ。マットを往復します。遠慮がちに走っているキッズたちに、高田先生は「いわきの子って、もうちょっとパワーがあると思ったんだけどな。もっと全力を出せる?」と問いかけます。向井先生は「恥ずかしがってるのかな?」と首を捻ります。そんな一言が、キッズたちのリミッターを解除させるには十分すぎる効果を発揮して、さらにスピードアップ! キッズたちの可能性をどんどん引き出していく見事なチームプレイでした。
次は雑巾がけです。小学校でみんなやっていることですが、トレーニングの効果も注目されており、足腰と体幹が強くなる効果があるそうです。「手を広げて雑巾をおさえ、濡れたマットをすべらないようにしっかり足でつかむことがポイントです」そんな高田先生のアドバイスを聞いて真剣に取り組むキッズたち。
手をついてマットの上を駆けるクマ歩きは、高田道場の中野先生が見事なお手本を披露します。うまくできなかった子も、何度か繰り返しているうちにぐんぐんとスピードが上がっていきます。「前に転ぶのはいいことなので気にしないでね!」向井先生からもアドバイスが飛び出します。
ここで一旦水分補給の休憩を取ります。すでにここまでの運動で、学校の体育の授業よりも運動量が多くなっているので、ゆっくりと水分を摂るようにスポーツドリンクを1人1本プレゼントしました。
休憩明けは2人1組での運動です。
バンザイ状態の手のひらと足のつま先をスクワットしながら交互にさわる運動、サイドステップで相手の周りをまわる運動、そして交互にジャンプする運動を次々と行います。運動の強度がぐっと上がり、しかも頭を使いながらの運動になるので余計に疲れるようで、終わった頃にはキッズたちは倒れ込むほど疲労困憊です。
それでも、運動のあとにはお互いの健闘を称え合うように「ヤッター! イェーイ!」とハイタッチ。先程のダッシュのときのように、羞恥心を取り除くとキッズたちは思わぬパワーを発揮するのです。お手本を見せた高田先生は「恥ずかしい気持ちをどうやって自分から捨てられるか? だよ」と言って、実際に巨漢のスタッフとお手本を披露。「ヤッター! イェーイ!」の後に抱き合ってくるくると回転する見事なパフォーマンスで、会場全体から拍手喝采を浴びていました。
「いまからDKCで子どもたちに人気のある運動をやります」と高田先生が予告してから始めたのは、タオルを使った綱引きです。
厚手のタオルの端と端を持って引っ張り合う単純な綱引きですが、キッズたちはいろんな先生と勝負したくて行列を作りながら挑戦してきます。休みなくキッズたちの相手をする大人たちは早くもバテ気味ですが、キッズたちの挑戦を受けた高田先生は「いいぞ!」「強く引け! 思いっきりだ!」と檄を飛ばしながら気持ちよく汗を流しました。
再び水分補給の休憩を挟んだ後は、いよいよレスリングの練習です。他のどんなスポーツでも、まずは正しい構えから始まるということを説明してから、構えを教わります。足の幅が広すぎて、狭すぎても、倒れやすくて不安定になってしまいます。肩幅のサイズに足幅を広げて低く構えることで、あらゆる衝撃に耐えられる安定したバランスになることを学びます。向井先生や高田先生が押しても、お手本を披露した中野先生と松本先生はビクともしません。
「女の先生も正しい構えをやればビクともしません」
高田先生に呼び出されて登場した石郷先生は何度か押されると、突如としてバック転でクルクルと回転し始めます。思わず驚嘆の声が上がる場内。器械体操出身の石郷先生は、じつは高田道場で体操を教えている先生なので、こうした動きは得意中の得意なのです。
キッズたちは(バック転はできませんが)その姿を見ながら自分たちでも正しい構えを身につけます。
「ここからの練習は、意地悪な気持ちではできない練習です」
向井先生はタックルの練習前に真剣な表情でキッズたちの目をまっすぐに見つめながら説明します。日大アメフト部のタックル問題があったことで、タックルという言葉の負のイメージが先行しがちですが、レスリングはタックルが非常に重要な競技です。だからこそ、その危険性をキッズたちにもしっかりと認識してもらい、正しい方法で学んでほしいと願っています。
タックルの入り方をゆっくりと念入りに教わって、実施に大人を相手に打ち込みをします。受け身を教わっていないキッズ同士でのタックル練習は絶対に行ないません。キッズは大人の先生の腰めがけて突っ込んでいきます。手は相手の膝の裏にくるように回して、相手に体ごとぶつかっていきます。大きな音を立てて、次から次へと大人たちが倒れていきます。
キッズたちの吸収するスピードに目を細めた高田先生は「いま、みんなは凄いスピードで伸びているね。このままの勢いで試合をやっちゃおう!」とすぐに試合をスタートさせます。試合は相手の両方を1秒間マットにつけたらフォール勝ちという、レスリングのルールが採用されます。
試合という言葉に目を輝かせ、早くやりたいと盛り上がるキッズたち。高田先生や宮田先生もキッズたちの挑戦に胸を貸します。かわしたり、フェイントを入れたりする大人に、勢いよく突っ込んでいくキッズたち。思いっきり体重をかけて、懸命にフォールを奪いに行きます。
あっという間に時間が過ぎてしまい試合の時間は終了。「みんな、先生に勝てたかな?」という質問に全員が元気よく手を挙げていました。
「練習が始まる前に、今日は自信を増やす日にしてくださいという話をしました。自分は頑張ると凄いパワーが出せると分かった人は手を挙げてください」
向井先生の言葉に全員が手を挙げてくれました。
「素晴らしいです。みんなが頑張ってた姿は私たちが見ていました。自分を大好きな気持ち、自信を大事にしてくださいね」
思わず笑顔がこぼれる向井先生です。
「今日、みんなにレスリングを教えてくれた大人たちは、今日来てよかったな、みんなと会えてよかったな、福島に来てよかったなという思いです。みんなは今日来てよかったなと思ったか、来なければよかったなと思ったか、あえて聞きませんけど、それをお家の人たちと話してみてください」
高田先生もキッズたちの目を見ながら語りかけます。そして、DKCというイベントの本質をキッズたちにわかりやすく伝えていきます。
「運動って楽しいよ、体を動かすのは楽しいよ、その後のご飯は美味しいよ、宿題はもちろんやらないといけないけど、よく眠れるよということを伝えたくて、ダイヤモンドキッズカレッジは13年も続けています。君たちに必要なのは、毎日は難しくてもできれば週1回は友達と体を動かして、たくさんご飯を食べて、たくさん睡眠をとってほしい。そんなメッセージを伝えたいんです」
キッズたちに「この場所でどうしても言っておきたいという感想があれば手を挙げて!」と呼びかけると、次々と元気に手が挙がりました。
「今日はみんな元気よく遊べて良かったです」
「みんなでプロレスをやれて良かったです」
「最初の運動は大変だったけど、あとは楽しかった。今日は来てよかったです」
「初めてのことができて楽しかった」
「私が楽しかった。来て良かったと思いました」
「初めてプロレスをやって、最初はうまくできなかったけど楽しくできたので良かったです」
「最初から最後まで全部楽しかったです」
なぜかレスリングが「プロレス」に変換されたキッズもいましたが、楽しい時間を過ごしてくれたようです。ちなみに高田先生からは「今日やったのは、プロレスではなくてレスリングです!」と訂正が入ったこともお伝えしておきたいと思います。
指導をした高校生の先生からも感想を聞きました。
「人に指導をすることを初めてやりました。とてもいい経験ができました。これからもキッズたちはレスリングを経験してもらいたいと思いました」
「みんな元気で、元気をもらえました」
「レスリングに対する姿勢が一生懸命で、自分もみんなのような姿勢でレスリングに取り組みたいと思いました」
指導する側、される側、それぞれに得るものがあったようです。最後は全員で礼をして終わりました。